天使の分け前

ウィスキーづくりをビジネスとして見たとき、生産者、特に生産量の少ない小規模な蒸留所にとっては採算を取るのが難しい商売です。

スコッチウィスキーが国外に輸出されるときの価格のおよそ74%は税金として英国政府に納められます。残りの26%から、蒸留所の生産コスト、瓶詰めやマーケティングなどのコストをまかない、利益を捻出しなければなりません。

さらにビジネスの採算に大きな影響を及ぼすのが、"The Angels' Share"(天使の分け前)です。

ウィスキー、ブランデー、ラム酒など、いわゆる「ブラウンスピリッツ」とも呼ばれる蒸留酒は「樽熟成」が必要です。スコッチなら熟成は短くとも3年、十数年の熟成が行われることは普通で、場合によっては数十年の熟成がなされる場合もあります。樽は基本的に木製で、液体は通さないが気体は通すため、熟成中にエタノールと水の一部が蒸発によって失われます。すると、熟成開始時の量と比較して、熟成終了時(出荷時)の量は減少してしまいます。この減少分を「天使の分け前」と呼んでいます。

ケンタッキーの暑い夏に比べて気温が低く湿ったスコットランドの倉庫では、年1~2%が蒸発で失われ、水分よりエタノールがより多く蒸発するため、熟成開始時と比べてアルコール強度が下がります。

一方ケンタッキーは温度が高く湿度が低いため、水分がより多く蒸発し、年4~10%も減少します。結果としてバーボンは熟成中にアルコール強度が増します。ちなみにインドにある蒸留所では1年で最大12%も減るといいます。

スコッチが年間1~2%減るということは、20年の熟成で樽の中味の40%がなくなるということです。これがウィスキービジネスの採算にマイナスの影響を与え、長期熟成のウィスキーの価格を押し上げているのです。

 

古い記事
新しい記事
Close

Popup

Use this popup to embed a mailing list sign up form. Alternatively use it as a simple call to action with a link to a product or a page.

Age verification

By clicking enter you are verifying that you are old enough to consume alcohol.

検索

カートの中は空です。
今すぐ購入