正しい綴りは、"whisky"か、"whiskey"か?
以前「ウィスキーの綴り(2021/6/21)」で話題にしましたが、このテーマについて、EWAのHans Strenge氏による解説を追記しておきます。
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11世紀、当時アクア・アーデン(aqua ardens)と呼ばれていたアルコールが発見されたとき、中世の人々にとっては非常にエキサイティングな出来事でした。この発火する可能性のある水、奇跡的な物質にはさまざまな名前がつけられました。クインテセンティア(quintessentia/第五のエレメント)、アニマ・デ・ヴィーニ(anima de vini/ワインの魂)、あるいはメルクリウス・ベジタビリス(mercurius vegetabilis/植物性水銀)などと呼ばれ、これにアルナルドゥス・デ・ヴィラ・ノヴァが、アクア・ヴィテ(aqua vitae/生命の水)と命名しました。
アルコール
「アルコール」という用語は、それが発見されてからずっと後の16世紀に導入されました。ドイツの医師、テオフラストス・パラケルススは、アンチモンの微粉砕粉末を指すアルクール(al-kuhl)というアラビア語の名前を、ワインから蒸留された微細な物質につけました。今日でも「アルコール」は、「エチルアルコール」または「エタノール」を指す言葉として日常的に使用されています。
生命の水
歴史的に"whisky"または"whiskey"という言葉は、ラテン語のaqua vitae(生命の水)のゲール語訳に由来しています。(アイルランド語のスペルでは「ish-kaba-ha」と発音します)
この単語には、usguebagh、usquebaugh、usquebea、usquabah、iskiebaeなど多くのバリエーションがありました。しかし、「生命の水」が1494年にスコットランドで最初に記録されたときは、
まだ"whisky"も"whiskey"も使用されていませんでした。
uisge beathaという用語(さまざまなスペルがあった)は、さらに変化します。スコッチウイスキー協会の資料によれば、「uiskie」という用語が1618年の葬儀の記録に登場し、1754年には英国の船長エドワードバートが手紙の中で常に「usky」という言葉を使用しています。
それでは、"whisky"または"whiskey"の最初の出現はいつだったのでしょうか?1715年頃に一般人によって書かれた文書の中には"Whiskie"という言葉が現れますが、まだ現在のどちらの綴りも使用されていません。
whisk(e)yの登場
その後、1753年にロンドンで印刷されたThe Gentleman's Magazineの記事に、"whiskey"の単語が現れます。サミュエル・ジョンソンの有名な英語辞典の第三版(1766年)には、"Usquebaugh"の説明の中に"whiskey"という単語が見られ、第六版では"whisky"と綴られており、両方使用されていたことがわかります。
たびたび、"whiskey"はアイルランドでのみ使用されているスペルであるとされてきました。今ではそうかもしれませんが、1879年にダブリン蒸留所がウイスキーについてのパンフレット「Truths about Whisky(ウィスキーの真実)」を発表したときは、一義的に"whisky"が使用されました。
アイリッシュ海の反対側では、「ウイスキーおよびその他の飲用スピリッツに関する王立委員会」が1908年の報告書の中で"whiskey"という綴りを使用しています。
要約
歴史的には、スコットランドとアイルランド、そしてイングランドでも、両方のスペルが一貫性なく使用されてきました。
今日スコットランドでは"whisky"という綴りが全体的に使用されており、アイルランドでは"whiskey"という綴りが使われています。
世界の他の地域では"whisky"が好んで使われますが、米国ではほとんどのブランドが"whiskey"の綴りを使用しています。(メーカーズマークやジョージディッケルなどいくつかの注目すべき例外がありますが)
一方、連邦規則集(スコッチウイスキー規則に相当する米国の規則)では"whisky"という綴りが排他的に使用されているため、このことが混乱を生じさせています。