マッシングでは、モルティングの過程で利用可能になったデンプンと酵素が利用されます。マッシングの工程で酵素はデンプンを糖に分解し、次の工程(発酵)で酵母がエタノールを生成できるようにします。
グリストが熱湯に投入され混ざりあったとき、デンプンから糖への分解が始まります。デンプンが水に溶け、酵素が糖を効率よく生成できる状態にするため、厳密に温度管理が行われます。
具体的には、ミル(粉砕)されたグリストは、約63.5℃(蒸留所により異なる)に加熱された水といっしょにマッシュタン(Mash Tun/麦汁を造るための大きな容器)に入れられます。
糖は溶解し始め、ウォート(Wort)と呼ばれる粘着性のある甘い麦汁が生成されます。麦汁は生成されるとマッシュタンから排出され、アンダーバックと呼ばれるタンクに集められます。
残りのデンプンを糖に分解するため、マッシュタンにさらに水が追加されます。これをスパージングといい、温度は最大80℃まで上げられます。これもアンダーバックに集められると、最後に約85℃の水をマッシュタンに加え、残留物に残っている糖をすべて溶解します。「スパージ」として知られるこの水は、排出された後、次のグリストのマッシングに利用されます。
アンダーバックからウオッシュバックに移されたウォート(麦汁)は60℃の高温で、このまま発酵工程に送ると酵母が熱で死んでしまうので、すぐにウォート・クーラーと呼ばれる熱交換器に送られ16~18℃まで冷やされます。
また、マッシュタンに残った残留物はドラフ(draff)と呼ばれ、牛の飼料として、あるいはバイオマスボイラーの燃料として利用されます。