インドは世界の他のどの国よりも多くのウイスキーを消費しています。ウイスキーの2本に1本近くがインドで販売されています。世界のウィスキー売上ランキングのトップ5のうち、1位から4位までをインディアンウィスキーが占めています。(ちなみに5位はジョニーウォーカー)
市場調査プラットフォームStatistaが2021年に発表した統計によると、インドの1人あたりのウイスキーの平均消費量は2.6リットルです。
インド国内で「ウイスキー」と呼ばれるものの大部分は、サトウキビの廃糖蜜をベースに造られたスピリッツです。これはインドが抱える食糧不足の事情から、アルコールの生産に穀物を使用することを躊躇しているためです。つまり、この酒は本来のウイスキーというよりラム酒にはるかに近いものです。この廃糖蜜を主原料とする製法はインド独自のもので、SWA(スコッチウィスキー協会)が定めるウィスキーの定義からは外れています。つまり、ほとんどのインドの消費者はウイスキー愛好家ではなく、安価な糖蜜ベースのスピリッツの愛好家と言えます。糖蜜ベースのスピリットは、ハイボールカクテルでコーラや他の甘い飲み物とよく混ざり合うため、インドの風土に非常に適しています。氷をたっぷり使ったこれらのカクテルを楽しむことは、暑い気候で涼しさを保つ工夫でもあります。さまざまなウイスキーカクテルの登場により、若い世代はインディアンウイスキーを楽しむようになりました。
その一方で、スコットランドのブランドもインドの消費者には大変人気があります。インディアンウイスキーコレクターのアヌジ・パテルによると、多くのインディアンウイスキーを飲む人は何よりもジョニーウォーカーを好みます。ただしインドに輸入されるウィスキーには150%の関税が課せられるため、インドで消費されるウィスキーの多くは、関税障壁によって保護されたインド国内で蒸留されたウィスキーということになります。
インドのウィスキーメーカーのうち、アムルートとポール・ジョンは非常に優れたインドのシングルモルトウイスキーを生産するインディアンウイスキー業界の旗手と見なされています。世界45か国で販売されているこれらのブランドのウイスキーは、熟成プロセスが比較的短いため、一般的に軽くて新鮮で、マンゴー、バナナ、パイナップルなどのトロピカルフルーツの甘いノートが特徴となります。
しかしインディアンウイスキーは非常に多様です。たとえば、アムルートのフュージョンはまったくフルーティーな性格を持ちません。インドの大麦とスコットランドのピートモルトの両方に由来する留出物の組み合わせであるフュージョンは、長くスパイシーなタバコのフィニッシュを備えた素晴らしく複雑なスピリットに仕上がっています。フュージョンのようなウイスキーはインドでは最も人気のあるものではないかもしれません。その代わり、世界中の膨大な数の消費者向けに輸出され、国の売り上げの半分以上を稼いでいます。
インディアンウイスキーの評判はますます上がってきており、将来が有望視されています。