アイルランド共和国と、イギリス領の北アイルランドの双方で造られるウィスキーをアイリッシュウィスキーと呼びます。
原料は、モルト(大麦麦芽)と未発芽の大麦、その他の穀物(オート麦、小麦、ライ麦)で、ポットスチル(単式蒸留器)で3回蒸留し、アイルランド共和国または北アイルランドの倉庫で3年以上樽熟成させます。
アイルランドはウィスキー発祥の地であり、かつては生産量世界一を誇っていましたが、1920年代以降は衰退の一途をたどります。
まず、ウィスキー論争でスコットランドのモルト蒸留所とともに連続式蒸留器への反対運動に参加したことが自らの首を絞めることとなりました。また、英国との間で互いに高い関税を掛け合う経済戦争の結果、1920年代当時の大英帝国の商圏からアイリッシュが締め出されました。
さらに同じ頃に禁酒法が施行されていたアメリカでは、まがい物に「アイリッシュ」のラベルを貼ったものが多く流通したため、アイリッシュウィスキーのイメージが悪化。第二次世界大戦中、国内消費を確保するため輸出を禁止したアイリッシュウィスキーに対して、スコッチは外貨獲得と国内産業保護のため輸出を拡大し、その結果ヨーロッパ戦線で戦っていたアメリカ兵を中心に帰還後、アメリカではスコッチを大量に愛飲するようになったのでした。
しかし、1970年代以降にはシングルポットスチルが愛飲家によって再認識されるようになり、復活の動きが目覚ましいところです。
現在アイリッシュ最大のブランドはジェムソンで、グローバルブランドとしては世界4位にランキングされています。