アイリッシュウィスキーの全盛期は18世紀で、この時代にはアイルランド全域に何百という蒸留所が存在していました。生産量でもスコッチウィスキーを上回り、世界のウィスキー市場のシェア6割を占めていました。
その後の衰退については「アイリッシュウィスキー(2021/7/19)」をご覧ください。
アイリッシュウイスキーは、大別すると、ピュアポットスティルウイスキー、モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキーの4種類の形態に分類されます。このうちピュアポットスティルウイスキーはアイリッシュウイスキーだけに見られる形態で、原料に“麦芽(モルト)と未発酵の大麦などを配合"したものを使い、単式蒸留器で3回蒸留を行うという、アイリッシュウイスキーの特徴を満たしています。
この製法によって、雑味が少なくなめらかで穏やかな味わいが生み出されています。
このように、アイリッシュウイスキーがノンピーテッド主体で、3回蒸溜になったのにははっきりとした理由があります。
まず古くからイングランドの統治下にあったアイルランドには、さまざまな課税が繰り返し行われましたが、そのなかで、とくに麦芽にかかる税の負担を軽減するためにウィスキー製造者は未発芽の大麦使用比率を高くしていったのです。
また蒸溜においては、16世紀には2回、3回、4回蒸溜がおこなわれていたという記録があるようですが、やがて大英帝国の特産品としてアイリッシュウイスキーが重要な役割を担うようになるにつれ、品質向上を目指していくなかで3回蒸溜が定着したと考えられています。
アイルランドにはスコットランドと同様、ピート原野が存在しました。18世紀末まではキルベガン蒸溜所でピートを焚いており、19世紀に入ってもしばらくは石炭が不足するとピートを燃料にしていたといいます。その他の蒸溜所も同様で、かつてはアイリッシュウィスキーにもスモーキーフレーバーがありました。
19世紀に入り、やがてアイルランドのウイスキー産業が巨大化すると、燃料がピートだけでは間に合わず、石炭や木材を燃料に使用するようになりました。イングランドから大量の石炭が運ばれてくるようになったのです。